[2013年4月改組]
2013年4月をもって新たな組織に発展し、研究を展開しています。 > 環境資源科学研究センター
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女性研究者の素顔

無理なく、こつこつ 好きな研究を続けたい
プロフィール

大津(大鎌)直子(おおつ・おおかま なおこ) 代謝機能研究グループ 代謝機能研究チーム 基礎科学特別研究員

1998年3月東京大学農学部応用生命化学専修卒業。2003年3月同大学農学生命科学研究科にて「遺伝子発現を指標とした高等植物の硫黄栄養に対する応答の研究」で博士号取得。2003年4月〜2004年3月北海道大学にて博士研究員、2004年4月〜2007年12月アイオワ州立大学にて博士研究員としてグルタチオン代謝の研究に従事。2008年4月より現職。2009年夏、第2子出産予定。

研究者になろうと決意されたのはいつごろですか? 

決めたのは、大学院に入ってからでした。問題の答えがたったひとつ、すっきりと出る理系科目が好きでした。中学・高校では物理に興味をもちました。化学の授業で物質の色が変わることを習ったときも、それがなぜなのか、その根底には物理学があると思いました。高校の物理が理解できるようになってから、化学や生物がもっと好きになりました。高校から大学にかけては、趣味のオーケストラやブラスバンドにも打ち込みました。
大学では、農学部に進みました。植物に囲まれているのが好きだなという漠然とした気持ちと、幼いころから母の手料理で丈夫に育ててもらって、食の大切さを感じていたことがきっかけでした。農学部では半数以上が修士課程を出て就職するので、自分もそうなるのかなと思っていました。
ですが4年生で研究室に配属されて、自分の手を動かして実験するのが楽しくて。研究者としてやっていける自信はなかったのですが、指導していただいた先生から「努力すれば道は拓ける」と励まされ、博士課程に進む決心をしました。努力して、博士論文を完成させて、ようやく自信がつきました。

ご出産されていますが、研究はどのぐらい中断されましたか? 

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アイオワ州立大学でポスドク(博士研究員)として働いている間に、長女を出産しました。産前3週間、産後6週間休みましたが、アメリカではたいていの人が出産直前まで働いて、産後7週目に復帰していました。保育園も生後7週目から預かってくれますし、無理なく働ける環境が整っているからすぐに復帰できるということがわかりました。休業期間が短ければ、仕事への影響も少ないので、ばりばり働きたい人でも子どもを産もうと思いやすいのではないでしょうか。

その大学での子育て支援制度には、どのようなものがありましたか?

妊娠7カ月までは大学内で検診を受けることができ、出産後も、搾乳室が整備されていたり、ベビーシッター斡旋制度があったり、大学の支援体制がとても充実していました。また、実験器具の洗浄は学部生がアルバイトとして担当するなど、分業もきちんとできているので研究の効率がよく、定時でさっと帰ることができました。理研も分業はかなり進んでいると思います。
大学院生もたいていお給料をもらって自立しているせいか、研究棟のひとつの階につねに2〜3人は妊婦がいるという状況でした。

育児しながら働き続けることが自然にできる環境だったのですね。

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通勤時間も短い人が多かったですし、夫婦が近い職場で働けるように配慮してくれるのもアメリカの特徴だと思います。また、男性が家事や育児に積極的に参加していました。
日本のお父さんは忙しすぎると思います。労働時間が長く、子どもの寝顔しか見ることができないお父さんたちは気の毒だと感じます。その反面、日本人が提供するサービスの質はすばらしいということも、帰国して実感したことですが。共働き家庭は、両親が一緒になって子育てしないとやっていけないので、女性の社会参加を促すならば、男性の育児への参加と、周囲の理解も促す必要があると思います。
また日本では、小さい赤ちゃんを預けるのはかわいそうという風潮がありますが、実際に子どもを預けてみて、そんなことはないと感じています。友だちができて楽しそうですし、親以外から色々な刺激を受けるのはよいことだと思います。日中一緒にいてあげられない分、夜や週末は子どもとの時間を大切にするよう心がけています。

今後、研究をどのように進めていかれたいですか?

「グルタチオン」という化合物がとてもおもしろいので、研究テーマにしています。これは3つのアミノ酸がつながったトリペプチドで、硫黄を含む有機化合物としては、植物の体内にかなり多く含まれているものです。活性酸素の除去などのストレス応答で重要な役割を担っているだけでなく、硫黄・炭素・窒素の貯蔵や輸送という役割も果たしていて、どのように合成されるかはわかっているのですが、分解のプロセスがまだよくわかっていません。またグルタチオンは、有害な物質と結合して解毒を促すはたらきがあるのですが、植物の体内では、どのような物質がグルタチオンと結合するのかわかっていません。これを、メタボロミクスの手法を使って明らかにしたいと思っています。
研究は小さい作業の積み重ねで、忍耐力が必要です。こつこつがんばることは自分の性に合っていると思っています。

後進へのメッセージをお願いします。

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私はこれまでに4つの研究室を渡り歩きましたが、やはり複数の環境を経験するのはいいことだと思います。若いうちに、たくさんの新しいことを学べますから。
それと子育ての期間中は、ゆっくりでいいのでとにかく仕事を続けるということです。無理なく仕事をすれば続きますし、続けていれば、少しずつでも前進できます。自分だけでできないことは、周囲に助けを求めることも必要だと感じています。ただ、感謝の気持ちを忘れず、自分ができるときには助けてあげることを心がけています。

2009年2月